第一章・曖昧な職員たち

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「思ったより近かったですね……」 「おー、あれがコボルトの巣かー」 小さな崖の壁にできた穴のような巣の周辺には、巣ができたばかりということもあり殆どのコボルトが集まっているようだった。 この種類のコボルトは犬のような顔とゴブリンのような身体を持つ人型に近い種で、短剣や棍棒などの武器を持つ戦士のような戦い方をするタイプのようだ。 つまり、近接攻撃しかしてこない。 「よし、あたしが先頭を行く! マグナちゃん、補助魔法お願い!」 「はい、任せてください!」 採取の仕事であれば、フェンはとてもやる気になる。赤い髪を風になびかせながら、炎をシャムシールに纏わせ構える姿は、さながら火の鳥。 ただし、彼女はこう見えて本来は炎の回復魔法の使い手である。 憧れて覚えた剣技のため前衛にも立てるが、しかし前衛としては攻撃力も耐久力も欠ける存在。 「━━『アダマントスティール』」 マグナは長めの詠唱の後、フェンに魔法をかけた。それは他者の物理防御力を強化する、地属性の魔法。 「ありがとー!」 「━━さらに……『フォッシルスティール』」 同じく長めの詠唱の後、フェンに体力を強化する地属性の魔法もかけた。これにより、耐久力が低めなフェンでも前衛をこなせるようになった。 ただし、一定時間しか持たない。詠唱も長いため、戦闘中に再度かけ直すのは難しい。つまり━━ 「短期決戦だぁ!!」 「いきます!」 フェンは駆け出し、マグナも後に続く。
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