私の値段

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私の値段

ネオン広がるピンクな背景に煌びやかな光彩が走り、人の欲望が我が物顔で闊歩するこの街は、今や私にとって唯一の舞台。 メイン通りから少し外れた軒先にはその手のお店が立ち並び、そのうち一軒には私の偽名がプレートに刻まれている。 60分42000円。 それが私の値段。 ・・・何の? そんな野暮なことは聞かないで頂戴・・・ 地方から女優を目指して上京し、長い下積み時代を経てようやく女優としてスタートを切ったはずなのに、次から次へと現れる若手に少しづつ席を奪われ、気づいたときには谷底の底の底まで転げ落ちた。 一時期はファンクラブまで立ち上がった私の人気は見る影もなく、女優という肩書につられてやって来た酔狂な客も消え失せて今やたったの42000円。 ここの相場は30000円という事実を鑑みれば、素人に毛が生えた程度の女ということだろう。 「田舎に帰ろうか・・・」そんな弱気な言葉が何度も頭をよぎっては葛藤し、眠れぬ夜を過ごし、家族ですら「もう十分じゃないか・・・?」と私に挫折を求める毎日。 でも・・・。 それでも、私は諦められなかった。     
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