1人が本棚に入れています
本棚に追加
この場所
「ねえ、どこか行こう」
彼女が、僕の顔を覗きながら言う。大きな円らな瞳が輝いていた。
「どこかって?」
訊ねられた彼は思案を巡らせた。
お昼。
二人は待ち合せたものの、どこに出掛けようという計画はしていなかった。詳細は置いといて、とにかく会おうというのが最優先され今に至る。
「ふたりで楽しめるところ」
彼女は注文したオレンジジュースを手にした。
予め行き先を決めていなかった二人は、とりあえずと洋風な装飾に拘ったカフェに入った。店内は雰囲気をより表す為か、曲名もわからない落ち着いたシックな音楽が流れていた。確かにお洒落だと感じるが、これといって特別という訳でもない程には現代にはあり溢れていた趣で、もはや珍しくも何ともない。
「うーん、遊べるところがいいね」
「遊園地とか」
「楽しそうだな」
「でも、水族館も行きたい」
どちらも近いとは言い難いが電車で行ける距離だ。
「水族館か……」
彼は彼女とそこに訪れた際の想像をした。
最初のコメントを投稿しよう!