第6章 RING

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101 一人、歩きながら…3  プレートが取り付けられたドアの前に立つ。廊下に放置されていた小型の消火器を手にドアノブを回す。  意外にも鍵は開いていた。  中で談笑していた男達が、突然現れた廉司を見てきょとんとする。  一人二人と指で数える。合計七人。  その中によくよく見知った顔が二つある。組長の辻と、浜岡だ。  廉司が唇の端を吊り上げる。応接セットに座っていた男達が一斉に立ち上がった。 「かっ、鏑木!」 「おい、前より増えてんじゃねぇか。言っといてくれよ」 「テメェ何しに来やがった!」 「何って、お前」  廉司が話し切らないうちに、最もドアの近くにいた男が突っ込んできた。  腰を取られる前にその胸を膝で蹴り上げ、持っていた消火器で頭を殴りつける。床に倒れた男は頭を抱えてのた打ち回った。  それを見たほかの人間が怒鳴り声を上げる。  自分一人に向けられる殺気に、廉司はようやく体内の血が熱くなってきたのを感じた。  一気に高まろうとするテンションを抑えるように、噛み合わせた歯の間から熱い息を吐き、髪を後ろに撫でつける。  足元で転がっている男が上げる高い声が耳障りで、顔にもう一発蹴りを入れた。顎がつぶれた感触が革靴越しに伝わってくる。男の悲鳴が低い呻きに変わった。  廉司は辻を見ながら、足元の男を指で指し示した。 「こんなもんじゃねぇからな」 「アァっ?」 「ウチのやられ方はこんなもんじゃねぇ」  廉司がやってきた目的を理解したのか、辻の目が血走る。  それでいいとばかりに廉司は鋭い目つきで笑って見せた。 「ケジメはつけてもらうぜ、辻」  辻の合図で五人の男達が一気に廉司に向かってくる。  こんなケンカは久しぶりだ。
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