第6章 RING

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103 ケジメ…2 「一つ忠告しといてやる」  廉司の親指が撃鉄を起こす。 「城を守らせるなら強い奴を選べ」  辻が引き攣った笑いを浮かべながら、引き出しから手を離した。  銃を構えたまま、廉司は辻と向かい合うように彼の机に腰掛けた。 「……お前、正気か?」 「一人なうえ、丸腰で来るとでも?そっちの方が正気じゃねぇだろ」 「馬鹿な真似はやめとけ。一生ムショ暮らしだぞ」 「あの雑魚共、外にやれよ」 「撃てるわけねぇ。お前に撃てるわけねぇさ」  廉司の空いている手が懐から煙草を取り出し、机上のライターで勝手に火を点ける。吸い始めの大きな煙を吐き出した瞬間、銃口が辻の太腿目掛けて火を噴いた。 「ガアッ!」  血液が宙に飛ぶ。辻の体が跳ね、椅子のスプリングが軋む。男達がどよめく。  痛みに叫ぶ辻のこめかみに銃口が押し付けられる。 「て、テメェ、本当に撃ちやがってぇ……っ!」 「なあ、アイツらがいると邪魔なんだよ。わかるだろ」  淡々とした口調で追い詰める。  その目の冷たさに息を呑んだ辻は、玉のような汗を浮かべながら廉司の背後にいる男達に汗ばんだ手のひらで退室を指示した。  主を人質に取られて手出しが出来なくなった組員たちは、悔しそうな眼をこちらに向けながら一人ずつ部屋を後にする。  鉢植えをぶつけられて額から血を流していた浜岡は備え付けのロッカーに体をぶつけ、廉司の背中を睨みながらその場を離れた。
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