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105 男達…1
廉司に電話を切られ、気を落としていた一花は入電の内容を理解できていなかった。
「また立てこもりだよ。出番じゃねぇか?ワンダーウーマン」
向かいのデスクに座る三浦の皮肉も耳に入らない。
強面の男達が捜査一課の執務室に駆け込んできて、自分の名前を呼び、ようやく一花の意識が引き戻された。
主任の藤田が思わず腰を上げる。
しかし先に声を上げたのは組対の石井の方だった。
「おい、藤田!どういう事だっ!」
「何のことだ」
「とぼけやがってっ!ウチになんの相談もせず、こんなお嬢ちゃんを潜らせたのかっ!」
部屋の中が騒然とする。
しかし息を荒くしているのは組対の人間ばかりで、特殊班は皆困惑していた。
背後から数人の男に睨まれている一花も状況が呑み込めないといった様子だ。
石井は舌打ちしながら藤田のデスクへ歩み寄った。
「立てこもりの入電」
「あぁ、今のだろう?皆聞いてたよ」
「深更通りすぐの組事務所だ。拳銃を持った男が組長を人質に取った」
「そりゃ、ずいぶん肝の据わった犯人だ」
「笑い事じゃねぇ。立てこもった犯人は対立する組のトップだ。飛廉会会長。鏑木廉司」
背後でガタっと物音がした。
一花が顔を真っ白にして突っ立っている。石井は眉間に皺を寄せた。
「やっぱり何か知ってるんだな?」
「ば、馬鹿言うな。そいつは何も知らない。知ってるわけがないっ。組織との関係など何も――」
声を荒げ始めた藤田を無視して、石井は一花に詰め寄った。
「よぉ、お嬢ちゃん。教えてくれ。これはどういう事だ?」
しかし一花は焦点の定まらない目を宙に向けている。
「鏑木の要求はお前さんだ。女なら誰でもいいってわけじゃない。名指ししてきたんだ。部署も知ってたぞ。お前さん、飛廉会と繋がってるのか。それとも辻の方か?」
「わたしの、なまえを?」
「そうだ。『渓一花を連れてこい』。そう言ってきたっ!」
石井が一花のデスクを叩く。
小刻みに震える一花の手が、また胸元へ伸びるのを藤田は見逃さなかった。
石井が一花の腕を引っ張る。小さな体が操り人形のように揺れた。
思わず藤田が止めに入った。
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