番外編 「手紙」

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『廉司さん、お元気ですか?  突然ですが、昨夜は何を食べましたか?  夏目さんから、廉司さんが少食だということを聞いて心配しています。  刑務所の食事はきちんと栄養バランスが考えられているそうです。好き嫌いはあると思いますが、ちゃんと食べて下さいね。体の為です。  私も今、週に3回ジムに通っています。  仕事をしていた頃に比べると、随分筋力や持久力が落ちてしまいました。  でも、汗を流すのはやっぱり気持ちがいいです。……』 § 静まり返ったトレーニングジム。  フラットベンチに横たわり、目の前のバーベルを見つめてふぅっと一つ息をつく。  丁寧にウォームアップを終えて最後に挑戦する重量は30キロ。  SITにいた頃はさして苦労することなく持ち上げられていた重さだが、あの事件の後しばらく続いた入院生活と、トレーニングから遠ざかっていたこともあり少々不安な部分もある。  インターバルの終わりを告げるアラームが鳴る。  下半身の力を抜き、バーベルを握りしめる。はたして。 「ッ!」  ラックから胸に下ろしたバーベルを素早く持ち上げる。  肘が伸び切り、彼女の目が喜びに輝いた時、部屋中から拍手が巻き起こった。 「おめでとうございますっ!」 「一花さん、流石ですっ!」  映画館同様、貸し切り状態のジムの壁際でずらりと正座した男達が、演技でもお世辞でもなく本気で彼女を讃える。  この異様な状況に耐えかねた一花の腕がプルプルと震え始め、堪らずガシャンと大きな音を立ててバーベルをラックに戻した。 「あぁっ!?」 「大丈夫ですかっ!!」 「お怪我はありませんかっ!?」  叫びながらベンチに駆け寄ってくる男達に、上体を起こした一花が困惑した笑みを浮かべながら小さくガッツポーズをして見せる。  心配そうに眉を下げていた強面達がほっと安堵の溜息をついた。  左から差し出されたタオル、右から差し出されたスポーツドリンクを恐縮しながら受け取り、立ち上がった一花の背後で一人の男が声を上げる。
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