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76 孤独な朝…2
「くそ…っ」
一花が使っていた枕に顔を埋め、悪態をつく。
会ったばかりだというのに、彼女が傍にいないことを自覚した途端ネガティブな感情が頭をもたげて暴れ出す。
俺の傍を離れて今どこにいる?
俺にメールも返さず何をしている?
俺以外の人間と言葉を交わし、あの笑顔を見せているのか?
不安、焦燥、独占欲。
自分の弱さを認めたくなくて強がってみても、一日と持たない。
気にしないと決めたはずのメールボックスを指が勝手に開き、彼女からの連絡が無い事に落胆し「昨日の文面が悪かったのかもしれない」と、新しい糸口を模索する。
そうしてまた、返事の来ないメールを送る。わかっていても止められない。
たとえ一方的であっても、彼女に対する狂おしいまでの想いを伝え続けていないと不安で仕方がない。
言葉で。行動で。
これ以上ないほど表現しているつもりなのに。
(俺だけなのか?)
とらが理由とはいえ、雨の中、再び会いに来てくれたこと。
外さずにいてくれたネックレス。
朱く染まった頬。濡れた瞳。
恥じらいながらも受け入れてくれた体。
吐息交じりに自分を呼ぶ声。
これだけ揃っていても。
(俺が自惚れてるだけだっていうのか?)
眉間に皺を寄せ、全身の筋肉を強張らせた時、襖の向こうから夏目の声がした。
遮光カーテンが閉められた寝室は暗いが、もうすでに昼は過ぎているだろう。髪を掻き毟りながら面倒くさそうに返事を返す。
湿気た自分が情けなくなり、渋々体を起こす。
「今行く」
そう言いながら、一つの動作を起こす前にメールボックスを開くことが癖になってしまった自分の指をへし折りたい気分になった。
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