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78 分岐点…2
その時、天井に設置されたスピーカーが事件発生を告げた。
話を中断せざるを得なくなり、藤田と中嶋は残念だとばかりに笑みを浮かべた。
長椅子から立ち上がりコーヒーの缶をゴミ箱へ放った二人に、一花が背後から疑問を投げた。
「命令ですか?」
渡米は上官命令なのか。
ほんの少し表情を曇らせた一花が問う。
藤田は目を丸くし、中嶋は微笑みながら振り返った。
「考える時間が欲しい。そういう事かな?」
「許していただけるなら」
「構わんよ。さっきも言ったが、君はまだ若い。いろいろと思い悩むこともあるだろう。いつまでも待てるわけではないが、納得いくまで考えなさい。ただ」
何度もチャンスがあると思ってはいけないよ。
そう言い残して立ち去る中嶋に二人は頭を下げた。
「意外だな」
刑事部長の背中を見送りながら藤田が言葉を零す。
「てっきりお前なら二つ返事でアメリカに渡るかと思ったのにな」
自分だってそう思う。理由など問わず、喜んで引き受けただろう。以前の私なら。
指で弄る度、リングのチャームが服の中で右へ左へ移動する。
藤田は、一花が最近見せるようになったその仕草の意味をあえて訊ねずにいた。
「まぁ、とりあえず今は目の前の事件だ。持ち場に戻ろう。指示は追って出す」
「はい」
彼に肩を叩かれ、一花は頭の中を切り替える。
中嶋に奢ってもらったミルクティーが、プルタブも開けられぬまま手の中で冷たくなっていた。
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