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79 カウンター…1
「なんです、これ」
物凄い剣幕で廉司の屋敷に飛び込んできた畠山が、握りしめていた一枚の紙を応接間のテーブルに叩きつけた。
肩を上下させる畠山の横から夏目が手を出し、紙の皺を伸ばす。
見覚えのある顔がモノクロで印刷されていた。
「今朝事務所に届いたんです」
高ぶる感情を抑えながら畠山が告げる。
「浜岡が破門ってどういうことですか。辻組との掛け合いは上手くいったんじゃなかったんですかっ?」
食ってかかる畠山に廉司の目つきも鋭くなる。
夏目が横から鎮めにかかった。
「落ち着けよ。今、浜岡が破門を言い渡されたところで状況は変わらねぇだろ。アイツは確かに半グレ使って組に金を納めてたんだ」
「日付」
「あ?」
「日付を見てみろっ!」
畠山の怒声に押され、夏目は破門状の日付欄に目を凝らす。
一瞬、頭が真っ白になる。
「な、なんだこれ。一年以上も前じゃねぇかっ」
自分の目を疑うかのように、夏目はテーブルから紙を取り上げ何度も確かめる。
廉司はソファに座ったまま長い息をついた。
「……つまり、半グレにシャブを売らせてた浜岡は既に組とは関係ない人間だった。そう言いたいわけだ」
「こんなの文書偽造でしょう!日付なんていくらでも変えられる!」
「コッチが見落としてただけだと言われれば、それまでだ。今時ヤクザの破門状なんて毎週山ほど送られてくるんだからな」
「でも、辻組に売り上げを納めてたんでしょうっ」
「その証拠は掴んでない」
「!」
夏目と畠山が揃って言葉を失う。
廉司は煙草に火を点け、煙の行方を目で追った。
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