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◇◇◇◇◇◇
ーー昨日、凛に話を聞いてもらって、気を引き締めたばかりだったのに。
今週は恋愛運が無いようだ。いや、他の人ならモテ期がきたと喜ぶのだろうか。
目の前の人物に目をやりながら、真依は考えをめぐらせる。目の前にいるのは、同期の中で一番イケメンと噂の白木だった。
仕事が終わったら屋上に、
と時間と場所を指定して呼び出され、彼の口から出てきた言葉は、
「真依さん、僕と付き合ってください」
なぜ私は昨日の今日で告白を受けているのだろうか
と、真依は心のなかで盛大に首を捻っていた。
真意を確かめようと白木を見る。
ーーなるほど、これはイケメンだわ。
訳が分からなすぎて、呑気にそんなことを思ってしまった。
白木は、いつも通りの笑顔でこっちを見ている。
返事を待っているのだ。
ーーいけない、とりあえず返事をしなくては。
相手が誰だろうと私の返事は変わらないのだから。
気をとりなおしてもう一度白木の顔を真正面から見つめる。
断られるなんて、欠片も思っていないんだろうな……
と非常に申し訳ない気持ちになりながら口を開く。
「あの、せっかくのお話なのだけど、私…」
緊張してきて言葉が途切れる。
こんなイケメンを振るなんて、おこがましすぎて、かなり遠回しな表現になっている。
それでも、いわなきゃ。
頑張って、続きを、
…言うつもりだった。
確かに言おうとした。
しかし、
「誰とも付き合うつもりはない」
私が言おうとしたその言葉は、何故か私のものではない声で、私の耳に入ってきた。
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