プロローグ

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( 理解できていないのはお互い様か )  いつもそうだった。告白されて、今度こそはと思って付き合っては、今回みたいに振られる。  だって、分からないんだもの 『好きだ』『愛している』  どうしてそんな風に思えるのだろう。私は他の女子と何が違うというのだろう。誰かと付き合う度にそう思っていた。むしろ、それが知りたくて付き合った。  それでも、『愛』とか『恋』などというものの正体は分からなかった。恥ずかしげもなく(照れながら言う人もいたが)、そして惜しげなく自分に向けられる愛情に、時には寒気すら感じてしまうことがつらかった。私の中で増えていくのは同じ気持ちになれない罪悪感ばかりだった。  そんな状態で付き合う私たちのそれは、単なる「恋愛ごっこ」だ。少なくとも私にとってはそうだった。  意味も分からないままテンプレートに沿って、相手が喜ぶことをして、相手が望む言葉を返す。私がしている「恋愛」は、子どもの「ままごと」と何が違うのか。  そして何より、 ( ……気持ち悪い )  相手が、とか、行為が、とかよりも何よりも、そんな「恋愛ごっこ」をしている自分自身が、気持ち悪かった。  それでも、普通になりたくて、皆と同じ気持ちを知りたくて、私は同じ失敗を繰り返してきた。 ( ああでも、もう疲れたな……)  私は「普通じゃない」んだ。  今も忘れない、大学3年目の夏  その日、私は「普通」であろうとすることをやめた。
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