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あんたは良くも悪くも社交辞令が分かりにくいんだから。
仕事のときはそれでいいけどね……
恋愛感情がからむと面倒なんだからねー
ぶつぶつ独り言のように呟き始めた凛を、
「まあまあ」と片山がなだめる。
「今回の人は、あっさり引いてくれたみたいだし良かったね」
「そうよ!」再び凛が叫んだ。
なだめたつもりが、片山が凛にさしたのは油だったようだ。
「今回は聞き分けが良かったみたいだけど、
引き下がらなくて、ストーカーにでもなったらどうするのよ…」
怒りながらも心配してくれているようだ。
「もっとはっきり態度に出してしまえばいいのよ。あなたに興味はありませんって。そうしたら片山くんみたいに良いお友だち、でいてくれるかもよ?」
ねー
と、矛先を向けられた片山は苦笑いをしながら言う。
「凜さん、無関心はつらい」
冗談よー
とじゃれている二人を見ながら真依は考える。
無関心
無関心な態度を取るということは、冷たく接するということじゃないのか。
そんなことをしたら嫌われてしまわないかしら。
分からない。
自分に向けられる好意は分かる。だけど、
「どんな態度をとったら好意を持たれるのか、分からないのよ」
「そんなの、私も知らないわ」
あっけらかんと凛が言う。
「雰囲気よ。なんとなく、あーこの人好きだなーって」
そのなんとなくが真依には分からないのだ。
この 分からない ということが、真依にとってどれだけ不安なことか、きっと凜にはわからない。
昔みたいに、恋愛感情を理解したいという思いはもうないけれど、下手に返したら好意を持たれないどころか、嫌われそうで。
こんな時、
ああ、かみ合わないな……と真依は思ってしまう。
それでも、
「真依は、考えすぎなのよ。もっと気楽にいきなさーい」
そう言って真依の肩をたたく凜は、真依を否定しない。
お前はおかしいと一度も言わなかった。
「凜さんは考えなさすぎですけどね…」
と隣で突っ込みをいれる片山も同じで、そんな二人の隣が真依にはとても居心地が良かった。
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