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「あ、でも…」思い出したように片山が言う。
「僕と会ったころは、もっとはっきり恋愛感情お断りのオーラがあったよね」
え、そうなの?
凜が意外そうに聞いてくる。
「あー…その頃はちょっとヤケになってて…」
片山と出会ったのは今の会社の内定者研修の時だ。
当時は、忘れもしない「あの日」からまだ1年もたっていなくて、
「誰とも付き合わない!」という意志が何よりも強かった。
いやー、失うものがないって強いわね
当時を振り返って、しみじみと思う。
それにしても、
昔はもっと気を張っていたみたい。
片山と「友達」になってからは、片山が真依と一緒にいることで、他の男性からの「恋愛的な」関わりが減っていたようだ。
(真依と片山が付き合っているといる噂が流れて、それを否定して回ることもあったが、それは別の話だ。)
無意識のうちに、片山くんを利用していたのかも…
片山といる時間が増えるにつれて、
気を張ることは減っていた。
相手に期待させない対応を考えることもなかった。
あれ、これってつまり、
ーー私が最近油断してきたのって……
「片山くんのせいだなー」
「え、何の話?」
突然の責任転嫁にうろたえる片山と、その隣で爆笑する凜。
始まりはいつもとは違ったが、いつも通りの夜が過ぎていった。
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