ゴリラリアン。

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 リンゴ、ゴリラ、ラッパ、パンツ、ツミキ、キツツキ、キ・・・キ・・キツネ、寝息、キ・・・キジ!時期、・・・ 「あーもう!お前とやってもつまんねー」 いつもの教室。いつもの昼食。動いたせいで制服にエビフライを落とす。これも全部こいつのせい。 「またすぐ投げ出して怒る!あんたはゴリラを見習ったほうがいいわ」 教室に散りばめられた赤と青が昼なると、そこに磁石でもあるかのように、色、場所、きれいに分かれる。けど俺は動かない。こいつも。多分、普通ではないのだろう、俺も、こいつも。 「ゴリラはね、繊細で優しい生き物なのよ。しかも、知性もあって体脂肪率は7%。知ってた?」 良く喋る。小さな二段弁当はまだ半分以上残ってる。 「ウッホホ、ウホ」 「フフっ、やるならちゃんとやりなさいよ。」 俺のことは見透かす癖に、こいつは透ける気配がない。もう校庭で遊んでるバカの頭には、「楽しい」がハッキリ透けて見えるのに。 「こないだの大会、残念だったね、行ってたんだよ私。」 ちょっと小さい声で。顔は見てないけど、多分表情も変わってる。よーく見たら黒板に顔が映る気がして前を見つめる。 「知ってる。すぐ見つけたよ。俺がゴリラだったら勝ってたかもなーあの試合。」 「・・・」 こいつはいつも変な間を開ける。この数秒はブスで声のでかいあいつの笑い声も、録画してる昨日のアニメのネタバレも聞こえない。 「ありがとう、来てくれて」 小さな声で黒板に向けて。 「暑いねー。ゴリラは暑いの平気かなー」 「さあ、ゴリラって臆病なんだってさ。」 たった今携帯で調べた情報だ。 「ふーん。変なとこだけゴリラに似てるね」 「おい!」 もうすぐチャイムの五分前、こいつはトイレ鏡で外見チェックに行く時間。ほら、椅子引いた。 「なあ、もう一回だけしりとりしようよ」 「いいよ、降参はなしでね」 「俺が勝ったら今週、動物園行こうよ、ふたりで」 「え、うーん、私そんな暇じゃないしなー、まっ、どーせ負けないからいっか」 ああ、なんでよりによってしりとりにしてしまったんだろう、俺、じゃんけん強いのに。 「じゃあ、私から、しりとり」 「リンゴ」 「ゴリラリアン」 「え?なんて?」 「私の負けでしょ!本物のゴリラ、見にいこっか!」 キーン、コーン、カーン、コーン。 チャイムがまるで祝福の鐘のようだった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加