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みつはは息を切らしながらも、すぐにでもうさちゃんをその手に収めたかったのだろう、早く渡して欲しいと両手で催促をしてきたので、僕はウサギの人形をすぐさま彼女に手渡した。
「うさちゃん……よかったぁ……」
みつはは僕が手渡したウサギの人形を受け取ると、ぎゅっと強く、大切そうに抱きかかえた。
「ありがとうおじさん!」
それから彼女は僕に向かって、満面の明るい笑顔でお礼を言ってくれた。
「今後はしっかり無くさないように、うさちゃんを大事にするんだぞ?」
「うん分かった!」
「よろしい! じゃあ僕はこれで」
僕がみつはの元を立ち去ろうとしたその直後、彼女とは同じ声だが、しかしその声は耳から伝わってきたものではなく、僕の頭の中へと直接届いてきたものだった。
『みつはちゃんの元に戻してくれて、本当にありがとうございます!』
その声は、みつはが今、二度と手放さないようしっかりと抱えているウサギの人形、うさちゃん自らの声だった。
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