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『お礼をされるようなことは、僕はしてないよ。僕はただ、自分の取り柄を使ってみつはちゃんをサポートしただけだからね』
『そうですか……それでもあなたには感謝しています』
『ふふ……どうやら持ち主より、君の方が大人なようだね?』
『そんなことはありません……みつはちゃんがいないとわたしなんて、ただのぬいぐるみなんですから』
そんな自信無さげなうさちゃんに対して、僕はそっとフォローを入れてみせる。
『そうでもないよ。君はみつはちゃんにとって、かけがえのないもの、心の支えになっていることに間違いはない。それは僕にも、他の誰にも代わることができない、君だけが成れるものだからね』
『そう……なんですかね』
『ああ……だから彼女のこと、しっかり今後も見守ってやってくれ』
『はい! ありがとうございました!』
振り返ると心なしか、みつはの腕の中に収まっているウサギの人形は、僕に向かって頭を下げてお礼をしているかのように見えた。(多分、頭の部分が重力で垂れているだけだと思うけど)
「はあ……もう夕暮れか」
気づけば空は茜色に染まっており、夕闇がすぐそこまで迫って来ていた。
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