プロローグ

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「ジリリリリリリリーン。」 親方が、電話の真似をする。 「おいおい、やめろよ! ただでさえ暑いのに、更に暑くなる。」 あふろは団扇で扇ぎながら、親方に語気を強めて言い放った。 「ぶぁぁぁっあふろさん知ってる? デブの半径5メートルは、気温が3度上がるんですよ。はははっ!」 親方は笑いながら扇風機に顔を近づけて、変顔をしながら応えた。 ジリリリリリリリ。ジリリリリリリリ。 黒電話が、事務所に響く。 「おーっ! あふろさん、電話だにゃー!」 親方がニャンちゅう似の声で叫んだ。しかし、親方は暑いので動かない。決して動かない。 そんな親方を横目に、あふろは電話の受話器を上げた。 ガチャ。 「はい!こちら白パン探偵事務所。ご用件は?」 「......。」 返答がない。 「はい!こちら--」 その時だった。受話器の向こうから、奇妙な、いや棒読みちゃんの機械的な声が流れてきた。 「白パンさん、あなたに依頼をしたい......。」 「どうぞ。何でしょう?」 怪訝な表情を浮かべながら、ぶっきら棒に答えた。 「2001年9月11日に、同時多発テロがあった。その再調査を依頼したい。」 「そんな事ありましたねー。でも何で今さら?」 「理由は言えない。調べてレポートを郵送して欲しい。ただ、それだけだ。報酬は弾む。」 「報酬は、弾むって言ったってねぇ。何処ぞの誰かも分からないのに......」 実に怪しい。そんな事より何故に棒読み? あふろは唸りながら、ふと親方に目を向けた。親方は変顔をしながら、こちらを見ている。いや、見つめている。 「怪しまれるだろうと思い、予め事務所のポストに報酬の手付金100万円は入れておいた。確認して欲しい。」 あふろは受話器に手を当て、口は大袈裟に声は小声でポストと2回親方に伝えた。 「ポ・ス・ト・に・ポ・テ・ト?」 ポテトは親方の大好物だ。特にマックのポテトには目がないらしい。親方は重い体を俊敏に動かし、そそくさとポストに向かって行った。 「100万だにゃー! ポテトは、どこにゃー!」 玄関から親方の絶叫が聞こえる。 「確認出来たみたいだな。それでは、よろしく。」 電話は、切れた。 ーー白パン探偵事務所、三ケ月目にして初めての依頼。かなり不気味な依頼だが、どうなる?白パン探偵事務所!?ーー ドドドドドッ! 親方が急いで戻って来る足音が聞こえる。 「マック2セット買いに行くだにゃー!」
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