2人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「ジリリリリリリリーン。」
親方が、電話の真似をする。
「おいおい、やめろよ! ただでさえ暑いのに、更に暑くなる。」
あふろは団扇で扇ぎながら、親方に語気を強めて言い放った。
「ぶぁぁぁっあふろさん知ってる? デブの半径5メートルは、気温が3度上がるんですよ。はははっ!」
親方は笑いながら扇風機に顔を近づけて、変顔をしながら応えた。
ジリリリリリリリ。ジリリリリリリリ。
黒電話が、事務所に響く。
「おーっ! あふろさん、電話だにゃー!」
親方がニャンちゅう似の声で叫んだ。しかし、親方は暑いので動かない。決して動かない。
そんな親方を横目に、あふろは電話の受話器を上げた。
ガチャ。
「はい!こちら白パン探偵事務所。ご用件は?」
「......。」
返答がない。
「はい!こちら--」
その時だった。受話器の向こうから、奇妙な、いや棒読みちゃんの機械的な声が流れてきた。
「白パンさん、あなたに依頼をしたい......。」
「どうぞ。何でしょう?」
怪訝な表情を浮かべながら、ぶっきら棒に答えた。
「2001年9月11日に、同時多発テロがあった。その再調査を依頼したい。」
「そんな事ありましたねー。でも何で今さら?」
「理由は言えない。調べてレポートを郵送して欲しい。ただ、それだけだ。報酬は弾む。」
「報酬は、弾むって言ったってねぇ。何処ぞの誰かも分からないのに......」
実に怪しい。そんな事より何故に棒読み?
あふろは唸りながら、ふと親方に目を向けた。親方は変顔をしながら、こちらを見ている。いや、見つめている。
「怪しまれるだろうと思い、予め事務所のポストに報酬の手付金100万円は入れておいた。確認して欲しい。」
あふろは受話器に手を当て、口は大袈裟に声は小声でポストと2回親方に伝えた。
「ポ・ス・ト・に・ポ・テ・ト?」
ポテトは親方の大好物だ。特にマックのポテトには目がないらしい。親方は重い体を俊敏に動かし、そそくさとポストに向かって行った。
「100万だにゃー! ポテトは、どこにゃー!」
玄関から親方の絶叫が聞こえる。
「確認出来たみたいだな。それでは、よろしく。」
電話は、切れた。
ーー白パン探偵事務所、三ケ月目にして初めての依頼。かなり不気味な依頼だが、どうなる?白パン探偵事務所!?ーー
ドドドドドッ!
親方が急いで戻って来る足音が聞こえる。
「マック2セット買いに行くだにゃー!」
最初のコメントを投稿しよう!