act.5 男気お嬢様とドライなオカン系姉貴。

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act.5 男気お嬢様とドライなオカン系姉貴。

「むー、丼……。パスタ。パエリア? ホットドッグ……クレープにスムージーか……。もー多岐に渡り過ぎて何がなんだか分かんないっ」  あたしは頭を抱えると床にごろんと寝っ転がった。同時にお腹がぐうと鳴る。頭を使うと、お腹が減るんだよねえ……。   時計を見ると夜の8時だった。そりゃお腹も減るはずだよね、お昼を食べてから何も食べてない。  あたしはずっと部屋のノートパソコンの前で頭を抱えている。画面には「キッチンカー メニュー」で検索した、たまらなく美味しそうな画像達。  玉木さんから出た宿題がこれっぽっちも進まない。もう今日は土曜日。宿題の提出は水曜日なのに、まだ1ミリも結論が見えてこない。  『世界観の確立』『あたしの中のキッチンカー像』。  この2日ほどで、あたしは都内の有名なキッチンカーの出店場所を巡ってみた。それで得たのは、確かにキッチンカーなら素人でも開業出来るのかも知れないという予感。  なにせ、お客さんが多かった。オフィス街の空きスペースに大体4、5台のキッチンカーが出店しているんだけど、そのどのお店にも行列が出来ていた。行列の長さはまちまちだったけど、需要はあると言う事だ。  昔は昼休みと言えば、みんなでランチを食べに出かけたものだった。あたしがオフィス街の住人だった頃には、今日はどこへ行こうかと同僚と作戦を立てて、わくわくしながら向かったものだけど。  今はお昼休みにのんびりランチなんて訳にはいかなくなってしまっているんだろうか。働き方改革なんて言葉が叫ばれているけど、仕事の絶対量が減るって事じゃない訳で。  みんなお昼休みの時間を削って仕事をしているのだろうか。だからキッチンカーでお弁当形式になっているランチを買って、オフィスの自分の机で食べているのかも知れない。  「じゃあ、やっぱりおべんとモノ? かき込める丼とかがいいのかなあ。……でもそんなのってもう既に飽和状態ぐらいお店があるし。ちょっと変わったものじゃなきゃきっとウケない。デスクで簡単に食べれるもの……? ちょっと変わった食べやすいもの……」  ごろんごろんと床を転がるあたしの耳に、その時ぴんぽん、とインターホンの音が届く。ああ、やっとご飯にありつける。 「はーい! いらっしゃいませー!」
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