act.6 担げ!うどん姫。

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 あたしはしどろもどろになりながら愛佳ちゃんに一連の話の流れを説明した。和哉の事、玉木さんと和哉の店で出会った事、玉木さんの経歴は和哉の口から聞いたという事。  ものすごく好みの外見をしていて、それで多少ほだされた面はあるけど、ちゃんとあたし自身も飲食の道で生きていこうと考えている事を説明した。話し終わる頃にはちょうど国連大学の前。そこはもう既にお祭りの雰囲気で、美味しそうな匂いも漂っていて……。 「……まあ、話は分かりました」と納得してくれる、愛佳ちゃん。 「でも、怪しいと思ったらすぐにあたしに相談して下さいね。華さんは性格が良くてかつ田舎者です。猪突猛進で簡単にころっと騙される。第三者の意見を聞きながら進めるべきです。今日、その話を聞けて良かったわ」 「ホントホント。そういう訳でキッチンカーだったんすね。やっぱり美容ライターなんて華さんに相応しい仕事じゃなかったんですよ。うちの大事な花形グルメライターをヤリ捨てようたあ、美人百華の編集長め、ただで済むとは思うなよ……!」  ……気付けば背後にでかい人影。振り返ると、そこにいるのはおしゃべりゴールデンレトリバー。  カメラバッグを肩にかけ、憤慨したような顔をしてからあたしににこっと笑いかける。 「……誰? あ、華さん、さっき『あいつらもう待ってる』って言ってたの、この……?」  愛佳ちゃんはそう言ってでかい犬に頭を下げる。犬も愛佳ちゃんに会釈して、にこにこ笑いながらこんな事を言うのだ。 「どちら様か存じませんが、ホントに監視して下さいね。華さん俺からは全力で逃げるんで。イケメン詐欺師に騙されて300万巻き上げられた挙げ句にまたヤリ逃げられたんじゃ、俺としても面白くないっすから」 「……ちょっ、生田くん、何言ってんの。て言うか、なんでここが……!」  いやいや、さっきあたしが『あいつらが待ってる』って言ったのは、ナンパから愛佳ちゃんを助ける為の方便だ。あたしは決してこいつと待ち合わせなどしていない。  電話でだって行き先なんか言わなかった。ただ『キッチンカーを見に行く』って、そう言っただけなのに。  なんでこいつがここにいるっていうのよ……!
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