4.2度あることは3度ある

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昂平が、次にその人に会ったのは、翌日、昼休みに図書館に本を返しに行ったときだった。 相変わらず大量の本を器用に積み上げて、ヨロヨロしながら歩いている後ろ姿を見かけたのだ。 放っておいてもよかったんだけど。 「おい、また誰かにぶつかるぞ」 なんかいろいろ借りがあるし、とついつい声をかけてしまった。 声をかけてから、チッと舌を鳴らす。 しまった、コイツ、こんなでも准教授だった。 うっかりタメ語で話しかけてしまった…と一瞬反省しかけるが。 永瀬は全然気にもとめていないようで。 「あっ君!また会ったねー」 もう見慣れてきた気の抜けたへらっとした笑顔。 コイツの研究室の様子が目に見えるようだ。 昂平は、知らず、ため息をついた。 「あっ、ダメダメ、ため息なんてついたら、幸せが逃げていっちゃう!」 ため息をつかせた張本人に言われても。 「ほら、半分持ってやるから。つかさ、研究室の学生に手伝って貰えよ」 「いや~、みんな忙しいみたいで」 ほわん、と微笑む永瀬に、それは絶対学生にナメられてるだけだろ、と内心ツッコミを入れる。 「ありがとう、優しいね、君……ええと」 「堀越昂平」 やり取りがめんどくさいので一言で済むようにフルネームを名乗ると、彼は当たり前のように下の名前を呼んできた。 「昂平君」 研究室までその本を運んであげると、永瀬はにっこり笑って言った。 「時間があったらコーヒー飲んでいかない?」 今日はお菓子もつけるよ、2回も手伝って貰っちゃったから。 研究室のドアを開けると、中には誰もいなかった。 「あ!僕を置いて、みんなでお昼食べに行っちゃったな~」 もう、すぐのけ者にするんだから。 当然研究室には誰かいるものと思っていた昂平は、二人きりの状況に一瞬躊躇う。 それから、躊躇ったことに少し驚いた。 コーヒーを淹れるいい香りが室内に充満する。 今日のこの部屋は、窓から明るい光が差し込んでいて、昨日の夜とは少し雰囲気が違って見えた。 部屋の主がぽややんとしているせいか、どことなく和む空気が漂っていて、とても居心地がいい。 昨夜、遅くまでレポートを書いていたせいか、昂平は猛烈な眠気に襲われていた。
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