4.2度あることは3度ある

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「昂平君?」 「あ、スンマセン、なんか眠くなっちゃって」 目を擦りながら答えると、永瀬はのんびりと言う。 「昨日、あんな時間からレポート書いてたんだもんね」 あ、そうだ、と彼は続けた。 「あっちに僕の仮眠スペースがあるから、少し寝て行く?昼休みが終わる前には起こしてあげるよ」 「いや…それは」 さすがに図々しいから、と言いかける昂平に、永瀬は何にも気にしないような能天気な顔で。 「2回も手伝って貰ったお礼だから、気にしなくていいよー。そもそも君が寝不足なのは、僕が本持って帰っちゃったせいもあるんだし」 そして、そのおかしい距離感で顔を近づけてくるから。 つい、じゃあ、とおとなしく従ってしまったのだった。 ドヤドヤと人の気配がして、割としっかり寝てしまっていた昂平は、目を覚ました。 と、ごく至近距離の目の前に、誰かの寝顔がある。 ぎょっとして飛び起きると、部屋に入ってきた複数の学生たちの視線が一斉にこちらに向いた。 「誰だ?」 不審そうな顔をした学生は、昂平の隣に寝ている人物を見つけて、すぐに呆れたような顔になる。 「雪ちゃん何寝てんだよー」 ナメられているだろうと思ってはいたが。 雪ちゃん、て。 昂平は、全然起きる気配のないソイツを見る。 眼鏡をしていないからか、瞳を閉じているからか。 一瞬誰だかわからなかった。 永瀬は、意外なほど綺麗な顔をしていた。 「つか、お前誰よ?何、雪ちゃんと添い寝してんの?」 「俺、ソイツ知ってる…剣道部の1年だろ、なんか全国で優勝したことあるとかなんとかって」 硬派でカッコイイって女どもが騒いでるの見たことある。 そのとき、永瀬が小さく伸びをした。 「あれえ?ごめん、僕まで寝ちゃってた~」 相変わらずボサボサの頭でむくりと起き上がり、近くに放り出されていた眼鏡を手探りで掴み、いつもの永瀬に戻る。 時計を見て、焦っているようでそうでもないようなおっとりした口調で。 「ありゃま、昂平君、午後の講義始まってる!」 昂平は、幾分ホッとしてその場をアタフタと後にした。 いろんな説明をしなくて済んだのと、それから。 一緒に寝ている間、どうやら手を繋いでいたらしいことを、誰にも気づかれる前にその場を離れることができたことに。 どうしてそんなことになったのか、全くわからなかったが。 昂平は、その手をぎゅっと握り締めた。 一体自分に何が起こっているのだろうか。
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