5.厄介事は背負えない人のところにはやってこない

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「昂平、お前さー、比較文化学のやつとなんか揉めた?」 昂平は、同じ学部に通う剣道部の同期にそう聞かれて、は?と聞き返した。 「なんか、比文の先輩が、昂平の悪口言い回ってるって」 比較文化学。 全然身に覚えがないが、心当たりがあるとすれば。 そうか、アイツは比文の准教授だったのか。 あのぽややんとした笑顔を思い出し、昂平は、なんとなく気が重くなった。 なんかスゲーめんどくさい。 もう関わるのは止めておこう。 他人に悪口を言われるぐらいは全然気にもならない。 そもそも、この世の中で、嫌いになられることを恐れるのはたった一人だけだ。 そのたった一人は、彼が想いを遂げることさえ諦めていれば、永遠に昂平を嫌いになったりしないだろう。 血の繋がった家族なのだから。 だから、誰にどんな目で見られようとも、昂平には全然ダメージがない。 だけど。 これ以上、あのちょっとどこかヌケてる准教授と関わると、絶対にめんどくさいことになる。 例の昼休みの一件だけで、こうなのだから。 そう、思っていたのだけれども。
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