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永瀬の部屋は、それなりに広さがあるけれど仕切りがないワンルームだった。
一応ミニキッチンのようなものが部屋の隅に申し訳程度についているが、使われている形跡はない。
後は、ベッドと、壁面を多いつくす書架にびっしりと詰まった本に、入りきれず溢れてそこかしこに積まれた大量の本。
「汚い部屋でごめんねー」
ホントはコーヒーぐらい淹れてあげたいんだけど、見てのとおり何にもなくて。
永瀬はやや申し訳なさそうにそう言って、予備の眼鏡を探し始める。
「ええと、眼鏡、眼鏡…」
本の山を掻き分けたり、躓いたり、作り付けの収納の中を覗いたり、ぶつけたり。
視力が悪い中での物探しは、なかなか難しいらしい。
10分たっても、20分たっても、30分経過しても。
その間に、2回は本に蹴躓いて転び、3回ほど頭をぶつけて。
眼鏡は見つかる気配がない。
「昂平君…あのー申し訳ないんだけど」
とうとう永瀬は言った。
「眼鏡、見つからないみたい…」
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