11.エピローグ

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昂平は、顔が自然と赤くなってくるのを感じる。 確かに何回か、永瀬のそんな言葉は聞いた気がするけれど。 いつも何かのどさくさだったので、面と向かってはっきり言われたのはこれが初めてだ。 ましてや、昨日、目の前に立つその人への恋心を自覚したばかりである。 何か言わなければ、と昂平は赤い顔で言葉を詰まらせた。 この人は、彼が兄を好きなのだ、と勘違いしたままだ。 「俺、あの……」 「大丈夫」 優しい柔らかい声が、昂平の出てこない言葉のかわりにそっと囁かれた。 「君が僕を好きになりかけてくれてるのは、わかってる」 なりかけて、じゃなくて、もうなっているのだけれど。 「昨日、電話をくれて、僕の声が聞きたいって言ってくれて、本当に嬉しかったよ?」 だから。 「君がその心にまだ抱いているヒトより、僕のほうを好きになってくれるのを、ちゃんと待ってるから」 ヨシヨシと頭を撫でられて、永瀬のその言葉に反論すべきか迷った挙げ句、昂平は何も言わなかった。 アンタのことのほうがとっくに好きになってる。 ホントはそう言いたかったのだけれども。 言ってしまったら、その後に何が起こるのか、それが怖かったのだ。 だから、卑怯だとは思ったけれども、永瀬のその言葉に甘えることにした。 いや、もしかしたら永瀬は、そんなことも全てわかった上で、昂平に逃げ道を作ってくれたのかもしれない。 「大丈夫だから」 優しい声は、いつもそう言って昂平を温かくくるんでくれるから。 「さ、ご飯食べて、初詣に行こう?」 旧い年が終わりを告げて、新しい年を迎えようとしている今。 堀越昂平にとっても、旧い気持ちにケリをつけて、新しい気持ちが始まろうとしていたのであった。
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