2.それはお約束の出逢い方

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周りの部員たちから、腫れ物に触るように扱われながら、昂平は身支度を整えて部室を後にする。 この後のバイトまでは、まだ時間があった。 図書館に行って、レポートに必要な本を借りてくるか…と構内を足早に歩く。 晩秋の空は、まだ18時前だというのに、もう真っ暗だ。 昂平の通っている大学は、1時間半もあれば都心までいける場所にあるとは思えないほど長閑なところにあり、空には綺麗に星が瞬いて見える。 構内は無駄に広くて、部室から図書館までは歩くと結構距離がある。 冷たい北風が、昂平の身体を撫でていった。 心だけでなく、身体まで凍えそうだった。 図書館に着くと、それなりの人のざわめきが、なんとなく昂平の寂しい気持ちを少し慰めてくれた。 大勢の中に紛れている安心感。 バイトに間に合わせるために、手際よくレポート用の本を選び、貸し出しの手続きを済ませて館を出ようとしたところで。 山積みの本とぶつかった。 「うわわっ!」 その山積みの本から、人の声がして、盛大に崩れた本の山に埋もれて尻餅をついた人影が見える。 「あ…なんかスミマセン、大丈夫ですか?」 昂平は、その人影に向かって手を差し出す。 「こちらこそ、ごめんねー、ついつい本を持ち過ぎちゃって、前が見えなかったから」 柔らかい声がおっとりとそう言いながら、昂平の手がぎゅっと握られた。 本の中から現れたのは、ボサボサの頭にヨレヨレの上着を羽織った、いかにも研究馬鹿っぽいわりに、どこかほんわかした癒し系の雰囲気を持つひょろっとした男だった。 衝撃で斜めになってしまった、これまたいかにもな黒ブチ眼鏡を直しながら、へらっと笑う。 「君はどこも怪我してない?」 立ち上がると、そいつは、彼の兄とちょうど同じくらいの長身だった。 顔を覗き込まれるようにして聞かれ、昂平はぎょっとして少し仰け反る。 「いや、どこもなんともない…けど!」 「けど?」 ずいっとそいつは更に顔を近づけてくるから。 「アンタの距離感がおかしいっての!」 そいつはきょとんとして、それからまた、へらっと笑った。 「ごめーん、最近この眼鏡、度が合ってなくて見えにくいもんだから、つい」
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