記憶

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記憶

一番古い記憶は五百年前 「月、綺麗ですね…」 「…俺、死んでもいいよ」 一目見てお前だと分かった 微かで断片的なのだが とにかく彼だった 記憶というには曖昧すぎて それでも自分の中に残って離れない… イメージとでもいうべきか そこにはいつも彼がいた 「陽介、委員会」 「はいはーい」 たまたまなんだろう 俺とお前が同じ歳であること 互いに同じ高校に進んだこと そもそも同じ時代に再び生まれたことがもう… 君が覚えているとは思えない 始まりはいつだったか 「宇野ー俺さ、五百年前くらいから、覚えてるんだよ」 「は?何言ってんだってよーらしくねぇなー」 「っせーな、前世の記憶ってやつだよ」 「ふーん…それってどんな記憶なんだってばさ」 「…一番古い記憶は、泥と血の匂い」 次はいつだったか… 俺は猫だった あいつに飼われていた そのあとはどっかの殿様 あいつは従者だった気がする 戦争に行った お前はやっぱりいた気がする 次は平和だった 2人でよく将棋を指した 小学生の頃習ったでかい戦争 「小学生の頃、あれ知ってるって言ったけど、ふーんとしか言ってくんなくて」 「で、自分が変だと気づいたってわけか」 「ま、そんな感じだ」 「で、どうしたいんだよ」 「…は?」 「それを俺に言ってどうしたいんだよ」 「別に…なんもねーよ」 「なんだよそれ」 大槻陽介 前の名前は覚えていない 陽介 もう忘れない…
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