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「型紙。これでいい?」
涼はレッチェがすでにハトロン紙に引いていた型紙を取り上げた。
「ああ。ちょっと待ってくれよ、今微調整するから…」
素早く線を引き直し、再び涼の手に戻ってきた。
「涼ちゃん、それハサミで切って」
「うん」
涼は、ゆっくりハサミを進めていった。間違えないように、慎重に。
しばらく作業の音だけが響いた。
涼は、なんとか切り終えた型紙をこんどは布へと合わせてみた。
こんな感じかな?という風に。
「涼ちゃん、上手いじゃん」
「そ、そう?」
貸して、とレッチェは涼から優しく取り上げた。
「いい感じ」
レッチェの言葉に、涼も安心した。
「もうすぐだね」
「ん?そうだな」
「楽しみだな」
涼はにこにこ笑っている。
そんな涼を見て、レッチェはもう少し頑張るかと意気込んだ。
夕食を食べ終え、レディアは戸締まりをして少し早いが眠りにつき、紅はリビングで邪魔にならないように、クロと遊んでいる。
レッチェと涼は衣装作りだ。
「涼ちゃん、今日どうすんの?」
「俺、今日は泊まっていくよ。明日また学校行くときに、帰るね」
「そっか」
レッチェは、少し手を休めた。
「涼ちゃん、学校どうよ?」
「え?別に。普通だよ」
「そっか~」
レッチェはそれだけ聞いて後ろに仰向けになった。
チクタクチクタク。
時計の音がする。
にゃあにゃあと、クロが紅にじゃれる声がする。
「レッチェ」
「ん?」
「…何でもない」
「何だよ」
涼は時計を見た。
時計は12時を回っていた。
「あ。紅」
「何?涼ちゃん」
「もう寝なくちゃダメだよ」
「え~」
「え~じゃないよ」
「涼ちゃん、紅を寝かせてやれよ」
「ほら、行くよ」
「ん~クロ~行くよ~」
少し眠そうに、紅は涼に連れられて、クロと部屋へと戻っていった。
リビングへと戻ってきた、涼はレッチェの隣に座った。
「涼ちゃんさあ」
「何?」
「明日もガッコでしょ?もう寝てくれば?」
「でも」
「俺はいいの。もう仕上げるし」
「………わかった。おやすみ」
「おう。おやすみ」
レッチェは涼の背中を見送った。
「楽しみ……か。本当に仕上げないとな」
レッチェはひたすらに、取り組んだ。
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