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鬼の種
小学校低学年の頃、よく判らない理由でいじめにあった。
いじめっこはクラスのリーダー格の男子で、それまでとりたてて関わることもなかったのに、ある日その男子の命令で誰も私と口を利かなくなり、周りで聞こえよがしに悪口を言われるようにもなった。
もっとひどいいじめを受けている子も世の中にはいるだろうけれど、私にはその環境はとんでもなく苦しくて、毎日学校になんて行きたくないと思った。でも親に心配をかけたくなくて、無理に学校に通っていた。
そんなある日、いじめを避けるため、長すぎるお昼休みにいつものように教室を離れていた私は、とある女の子と出会った。
顔も名前も知らない子。だけど私に笑いかけ、話しかけてくれたのが嬉しくて、私はすぐにその子と仲良くなった。
毎日休み時間はクラスを抜け出し、こっそりその子と会っていた。それが気に入らなかったのだろう。
うきうき教室を離れる私の後をクラスメイトを何人かのクラスメイトが尾行し、私がその子と会っていることがいじめの主犯の男子に知れた。
いつものようにこっそり会ってる場所に行くと、その場はもう知られていて、唯一の友達である彼女は男子達に囲まれていた。
「お前、こんな奴に構うんじゃねーよ」
主犯が声高に命令すると、周りもそうだと囃し立てる。その勢いに気圧されるかのように、彼女はいじめっ子達の言葉にうなずいた。
たった一人の友達がいなくっなてしまう。絶望感に泣きそうになった私の目に、彼女の不思議な手の動きが映った。
何かをその場に撒くような仕草。いじめっ子達は気づいてないけれど、彼女の手がそう動く。
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