選択

衣服に隠れているものの、そこには確かに傷があった。化け物に咬まれた傷。

これが意味する事、それは私が間もなく死を迎え、皆を食い殺す化け物になるという事だった。

私には選択が迫られていた。

今ここで皆と別れ、一人になって死を迎えるか、黙って皆と共に行き、皆を危険にさらすか、それか、皆に話して、皆に判断してもらうか。

でも私は後者の二つの選択肢は無いに等しいと思っている。皆を危険に晒すなんて出来ない。僅かな生き残りなんだから。

話したところで、皆が一緒にいてくれるはずは無い。だったら選択肢は最初から一つだけ。皆に黙ってここを立ち去るしか方法は無い。

｢アイちゃーん｣
｢今、行きます｣

どこに行けば良いのかな。一人になる方法は？

｢ヒスイさん、カメラ代わりますよ｣
｢あ、本当？ありがとう。ちょっと最近、目が疲れててさ｣
｢この交代でちょっとは休んで下さいね｣
｢はーい｣

ヒスイさんと監視する役を代わる。この車は一人乗り。だからもしも死にそうになる事があれば、降りれば良い。

そして遠くに走って逃げれば良い。

でもそう簡単にはいかないのが現実だ。