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「大丈夫、ですか?」
地面に倒れて込んで、深く息を吐いたヒスイさんに近付いて話し掛けた。
「ああ……、死ぬかと思った……」
「生きてますから、立って下さいよ」
「ありがと」
手を差し伸べるとヒスイさんは手を取って、立ち上がった。埃を払って、溜め息を吐き、倒れた化け物を見下ろした。
私もその視線を辿って化け物を見た。二体倒れている。
「もうちょっとで咬まれるとこだった。本当、助かったよ」
笑顔を向けてくれるヒスイさん。それに胸が少し苦しくなった。
私は彼を一瞬だけど、道連れにしようとした。それが申し訳なくて、罪悪感になって、胸を締め付けた。それ以上に苦しくなった理由は、私が一人だから。
一人の道を選んだのは私自身。
「本当、良かったです。ヒスイさんが感染しなくて」
だから自分も笑ってみせた。
「何で無理して笑うの?」
「え……?」
口元は笑っているはずなのに、目が笑っていないヒスイさんが問い掛けて来た。何を言っているか分からなくて、間抜けな声が漏れた。
「……あ、ごめん。何でもない、忘れて?」
ヒスイさんは何かを察したのか、困ったような笑顔でそう言った。
「は、はい。じゃあ、探索、二人でしましょうか」
「うん。そうしよう」
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