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「もともとしゃべるほうじゃなかったと思うけど、そこまでだったっけ?」
「…………」
「よくここのバイト受けたし受かったね。そんなんで大丈夫?」
「…………」
「それとも、俺だから?」
何でそんな意地の悪いことを言うんだろう。私はバイトの制服をぎゅっと握って、反論しようとした。けれども、否定も肯定もできず、言いたいことを頭でまとめる間にまたお客さんが来て、話は流れてしまった。
いつもそうだ。私は小さい頃から話したいことを頭の中で整理するのが遅くて、その上タイミングも悪くて、口を開こうとしたら、すでに次の話題に移り変わっていることが多い。女子グループで話している時はとくにそうだ。
あがり症による赤面や声の震えも相まって、私はいつしか、家族や頼子以外とちゃんと会話することを半分諦めるようになっていた。それに、ニコニコ笑って話を聞いているだけなら傷つかないし、何より楽だ。
いつから、こんなふうになっちゃったんだっけ? もともとの性分もあるけれど、それを助長させたのは、あの中三の出来事からだろう。
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