一番会いたくなかった人

6/36
前へ
/37ページ
次へ
「ていうか、やっぱり和奈はさ、ちゃんと自分で意思表示できるようになったほうがいいわ。なんか痴漢にあっても、触られっぱなしで何も言わなさそう」 「やだな、その例え。私みたいなチビで地味なメガネ女、そんな心配ないよ」 「そういう子が狙われるのよ」 「……ハハ」  その場をしのぐように笑って誤魔化すと、頼子は、 「ホントに心配してるんだけど」  と、私の眉間を人差し指で押した。私は笑いながら「大丈夫だよー」と返した。 「そういえばさ、バイト、明日からだったっけ?」 「うん」  お弁当のアスパラベーコンを口に運びながら返事をする。  私は十一月に入った今月から、週末だけバイトをすることになっていた。買いたい本がたくさんあるからという理由だけれど、部活にも入っていなければ友達も頼子しかいないため、することがなくて時間が余っているということもあった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3484人が本棚に入れています
本棚に追加