第四章 近づく〈塔〉

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「浅田さんの気持ちを占って。出たカードを信じるから」 「玲子さんのこと、やっぱり置いてくるべきじゃなかったんじゃ……」  出たカードを信じる、と宣言し、夏輝は今浅田の家の居間にいる。 「玲子なら心配ない」 「ちょっと冷たいんじゃないですか? ……〈審判〉なのに」 「こだわるなあ」 「だって! ……だって、〈審判〉の意味は、だって……」 〈審判〉の意味は「復活」だと、前に浅田が言っていた。 「俺はべつに、玲子とよりを戻したいわけじゃないって言っただろ」 〈審判〉のカードはあれ以来見ていない。テーブルに出されたカードの山、その一番上には、先日浅田が言ったとおり〈ワンドの4〉が乗せられていた。 「信じられない。だってあんなに美人で、知的で、やさしい人なのに」  浅田が盛大にため息をついた。 「じゃあ正直なところを言おうか。俺は玲子のことを嫌ってはいないが、ちょっと困った変わり者だと思ってる」 「え、何で?」 「お前もわかるだろ? 別れた俺と、いまだに交友関係を持ってる」 「ああ……まあ、それは……」  たしかに玲子のその感覚は理解できない。夏輝は過去に付き合った男と会おうとは思わない。別れたら、それっきりだ。 「何で玲子さんって……そうなのかな」     
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