第四章 近づく〈塔〉

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「玲子いわく、気が合って、話も合って、趣味も合うのに、何で恋人関係じゃなくなっただけで絶縁しなきゃならないのかと」 「『だけで』って……。そこ結構大きいですよね、普通は」  否定的に言ったものの、「ああ、でも……」と夏輝は言葉を濁した。 「わかんないでもない……かな」  そういえば夏輝にもそういう経験があった。過去に一番長く付き合った男とは、恋人だったと同時に、親友に近い存在でもあった。別れることになったとき、もう明日から他人のふりなのかと思ったらひどく寂しく思えた。ケンカ別れではなかったから、友人として関係を続けたら、とも考えた。でも。 「でもそれ、浅田さんに新しい彼女ができたときどうしてたの? まさか玲子さんと会ってないよね?」 「……会ってた」 「うわ! サイテー」 「だよなあ……。俺も理解に苦しむ。いや、玲子の方から会いに来たんだよ。三者面談かって。マジまいった」 「え……と、それは、もしかして玲子さん、浅田さんに未練があって、ぶち壊したかったとか?」 「違う。その逆。あいつ、俺に女友達ができるたびに、その子と友達になりたがるんだよ」  夏輝は目を二度三度しばたいた。 「あの外見で俺と親しそうにされたら、そりゃまとまる話もまとまらないってんだ。たとえ玲子に悪気がなくても」     
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