第四章 近づく〈塔〉

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 浅田が三十一になっても独身のわけがわかった気がする。しかしどうして玲子はそんな行動を取っていたのか。 「あいつ、同性の友達いなくてな」  ああ、と夏輝はため息まじりに言った。それには「やはり」という意味が含まれている。 「本当は周りが思ってるような、オンナオンナしたやつじゃないんだよ。むしろ性格は俺より男前。ただ、あの見た目だからな……」  あれだけ美人だったらそうだろう。あらぬ誤解をたくさん受けただろうし、一緒にいて引け目を感じる者もいたはずだ。夏輝はそんなことまったく気にならないが。 「だから玲子が言うには、俺とは一生腐れ縁やってくつもりだから、俺に彼女ができたらその子とも親しくなりたいっていう、ちょっと変わった考え方……え!? お前、何で泣いてんの!?」  夏輝は鼻をすすり、目頭にたまった涙を指で拭った。 「だって、玲子さんかわいそう。ていうかかわいい。でもやっぱり、かわいそう」 「どっちだよ」 「どっちもよ。……玲子さんはずっと、寂しかったんだよ」 「……そうだな」  浅田もきっと、何だかんだ言って玲子をほっとけなかったのだろう。でなければいまだに会おうとは思わないはずだ。 「男友達もいたけど、結局男の方が玲子を異性として見てしまうから、友達のままではいられないんだよな」  ふと夏輝に疑問が浮かぶ。     
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