第四章 近づく〈塔〉

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「べつに、何も期待してませんよ。べつに……」  唇を尖らせ、浅田から目をそらす。そらした先には、タロットの箱があった。 「付き合ってるときに、玲子さんがタロットを?」 「ああ、そうだ。元々占いが好きだったかはわからんが、やっぱあいつも悩んでたんだろうな。周りにどう思われてるか……とか、いろいろな」  いろいろな、の部分は守秘義務なのだろう。 「だから浅田さんにタロットを覚えさせたと」 「そ。だったら自分でやれってんだよな。玲子のやつ、『浅田はまじめだから、やればできるでしょ?』って押しつけやがって」  結果そのとおりなのだから、玲子は見る目がある。 「それでタロット修得した浅田さんに、心の中えぐられたわけですね」 「そういうことだ。あいつは一生の不覚と思ってるだろうけど」 「そっか……。よかった。玲子さんに、心の内を見せ合える仲の人がいてくれて……」  だけど――夏輝にはどうしても気になることがあった。 「あの……」 「何だ」  しつこいと言われるかもしれないが、聞かずにはいられない。 「じゃあ、あの〈審判〉って何だったんですか?」     
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