第四章 近づく〈塔〉

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「そ。別れたというか、恋人ごっこを解散したというか。親友は親友でいればいいんだよ。用もないのに付き合ってるふりしてたら、いざってとき……災いになるからな」  変な付き合い方だと思っていたけど、考え方は大人なのかもしれない。ただ、「災い」という言い方は少し気になる。 「玲子さん、その人とはどうなったんですか?」 「ああ、俺と別れたあとで付き合い始めた」 「今は?」 「今は――」  浅田が黙り込む。黙り込んで、ふと、夏輝に視線をぶつけた。 「そんなことよりお前よ」 「ちょっと話変えないでくださいよ」 「お前、東城とはどうなった? さっきのあれ、……やっぱあっちは終わったと思ってなかったってことだろ?」  耳が痛い。 「ええと……はい、私の顕在意識だけが〈死神〉でした」  浅田の口が開く。だから言っただろう、と今にも吠えそうな浅田に、「でも!」と手のひらを向けて制する。 「さっき、ちゃんと伝えました」 「本当か? ちゃんと伝わったのか? ホテルに引きずられてるように見えたがな」 「伝えました! 奥さんを大事にしてくださいって。私とは、もう終わりにしてくださいって。ちゃんと、言いました」  そのあとブチ切れられてホテルへ引きずられたが。 「そういえば! あのときなんで私に電話したんですか?」     
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