第四章 近づく〈塔〉

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「タイミングって何ですか」 「だから……時間的にお前んとこの飲み会が終わる頃ってことだよ」 「何時にどこの店でやるって話は玲子さんにしたから、終わる時間も大体見当がつくでしょうけど……。それとダンナさんの出張が泊まりになるのと、どう関係があるんですか?」 「だからそのタイミングでダンナが帰らない宣言したもんだから、玲子がお前の身の危険を感じて――」 「ん? ……え?」 「で、二人であの辺のホテル街を探しに行ったわけだ。玲子が、多分店の位置から考えて連れ込むとしたらあの辺だろうって――」 「ちょ! ちょ! ちょ!」  両手を振って慌てて話を止める。変な汗が出てきた。 「ちょ、待って! 何で玲子さんのダンナさんが飲み会の日に出張だって言ったら嘘になるの? 何で玲子さんのダンナさんが泊まるって言ったら私が危なくなるの? 何で玲子さんのダンナさんが……」  言いながら、変な汗がどんどん出てくる。 「え、玲子さんのダンナさんって、まさか……」  背筋が凍るのを感じながら、夏輝はこのとき悟った。 「玲子のダンナは、東城だ」  近づく〈塔〉の正体は、これだったんだと。 .
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