第四章 近づく〈塔〉

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「でも裏を返せば、東城も愛情に飢えたやつなのかもな。玲子みたいに。だから条件に合った夏輝に近づいた。この子なら自分をまっすぐに愛してくれるんじゃないかと。そういう意味で見れば、〈カップのナイト〉が正位置で出たのもうなずける」  初めに占ったとき、過去を表すポジションに〈カップのナイト〉が出た。正位置ではあったが、周りのカードの影響から逆位置に近い意味だろうと浅田は読み取っていた。だけど東城の心情をおもんばかるなら、本当はもっと純粋だったのかもしれない。――不倫には変わりないが。 「玲子さんとは、お互い好きなんじゃないの?」 「そのはずなんだけどな。あいつらお互い正位置で向き合えば、こんなことにはならなかったはずだ」 「素直に愛情表現すれば……てことですね」 「だから夏輝は、あの二人の被害者だと思うぞ」 「玲子さんのこと悪く言わないでよ。……そうなるには何か理由があるはずなんだから」 「お前は人がよすぎだ。何年もぐずぐずしてる玲子にだって非はある」  浅田を無視してケータイを手に取り、夏輝は画像データを呼び出した。 「〈カップの3〉の逆位置……この三角関係って、私と玲子さんと、東城さんのことだったんだ。私てっきり……」 「夏輝と玲子と俺のことだと思ったか?」  恥ずかしくて顔が熱くなる。その三人での三角関係ということは、浅田が夏輝を好きだとか、夏輝が浅田を好きだとかいう事態を疑っていたわけだから。     
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