第四章 近づく〈塔〉

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「ええと……」  どうしよう、何て言ったらいいの? ていうかはっきり言ってくれないから、「そういう」意味で言っているのか違うのか、いまいちよくわかんない。……でも、浅田さんは真剣に話してる。なかったことにしてはいけない……と思う。だからなにか言わないと。嘘も適当なことも言えない。嘘偽りのない、私の気持ちを言わなければ―― 「……また、来てもいいですか?」 「あ?」  話をそらされたと思ったのか、浅田の眉間に深いしわが寄る。 「浅田さんの作った野菜、これからも、いっぱい食べたい……です」  変な答え方だったろうか。でも嘘じゃない。またここに来たいし、浅田の作った米や野菜を食べたいし、浅田の顔を、見に来たいと思う。 「ああ、いつでも来い」  そっけない言葉で返されたが、浅田の機嫌はどうやら直ったようだ。眉間の深いしわが消え、代わりに目尻に笑いじわが現れたから。 「さっきの、浅田さんの気持ちを占ってもらう件ですけど。あれ、もういいですから」 「へえ、いいのか? 出たカードを信じるんだろ?」  浅田が眉を上げ、意外そうに言った。 「いいです。だって目の前に浅田さんがいるし、よくわかんないけどいろいろ話してくれたし」     
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