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夏輝はテーブルを叩きつけんばかりに両手を置いて、叫んでいた。一瞬だけ店内の視線が集まったのを感じて、声のボリュームを落とす。
「『でも』とか『本当は』とか、そんな余計な言葉、いらないんです。余計な言葉で気持ちを濁すことなんて、しなくていいんです」
そんなことしなくていい。すべきことは、いたってシンプルなのだ。
「好きなら好きって、全部ぶつければいいんですよ!」
玲子の想いを、全部東城に注ぎ込めばいい。寂しい男だというなら、玲子に前科があろうがなかろうが、私は今あなたを愛してると体当たりすればいいじゃないか。
「東城さんも悪いけど、玲子さんも迷うのをやめないと! 玲子さんが迷うから、東城さんも迷ってしまって、他の……私なんかに手を出そうとするんですよ」
ニッコリと笑ってみせたつもりだったが、夏輝の目もじんわり涙で潤ってしまった。
「夏輝ちゃんも、浅田と同じことを言うのね」
この日初めて、玲子が笑みを見せた。
「二人から同じことを言われるってことは、やっぱりそれが正しいってことよね。……浅田にも言われたわ。――ダンナに愛されたいなら、俺を通さないで本人に直接言えよって。すごく当たり前のことで笑っちゃった。でも、それがずっとできなかったのよね」
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