第四章 近づく〈塔〉

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 前に浅田は、玲子のことを通院患者みたいなものだと言っていた。きっと不安に押し潰されそうになるたび、浅田から言葉をもらっていたのだろう。 「……もしかして、東城さんの浮気相手が私だってこと、私が言う前からわかってました? 浅田さんの占いで」  玲子が一度目をしばたかせ、ああ、と漏らした。 「さすがにピンポイントで夏輝ちゃんだとはわからなかったわよ。その頃はまだ浅田と夏輝ちゃん、出会ってなかったし」  そりゃそうだ。 「でも――」  その時のことを思い出しているのか、玲子があごに軽く指を添えてうっすら微笑んだ。 「〈太陽〉だって言ってたわ」 「え?」  ピクリと体が反応する。 「今度の東城の相手は〈太陽〉だって。だから安心しろって」 「安心しろ? 何で?」 「〈太陽〉は明るくて強いエネルギーだから、陰でコソコソやってるお前のダンナじゃどうせ太刀打ちできないって」  うふふ、と玲子から笑い声がこぼれた。まぶしいものでも見るように、目をうっすら細めて夏輝を見つめる。 「さっき夏輝ちゃんに叱られて、浅田の言ってた意味がよくわかったわ。やっぱり夏輝ちゃんは〈太陽〉ね。まっすぐで、そしてあたたかい」 ――以前、浅田に太陽の二種類の光線について言われたのを思い出した。直線は光を、曲線は熱を表していると。     
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