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「浅田のやつ、『お前ら逆位置夫婦には敵わない相手だよ』ですって。本当あいつってムカつくわー」
今度は夏輝が、目を細めて笑った。玲子もやっと、軽口を叩けるようになったようだ。
「この前もね、浅田何て言ったと思う? 『お前今、〈ワンドのクイーン〉逆位置』ですって。もう本当うるさいったら!」
やはり〈ワンドのクイーン〉は玲子だったのか。
「私もよく浅田さんに、〈太陽〉の逆位置だって言われます」
「そういうとこがムカつくのよねアイツ」
二人で笑い合って、今日初めてグラスを口へ運んだ。ビールの泡は、とっくにへたっていた。
「あの……」
「なあに?」
玲子の笑顔は、以前のように光を放ち始めていた。
「その……」
ジョッキの流れ落ちる水滴を見つめる。――これを聞いてしまってもいいのだろうか。せっかく玲子との関係がよくなったのに。
「……いえ、やっぱりいいです」
「浅田のこと?」
ピクン、と顔が上がってしまった。
「いえ……」
「浅田のことね」
玲子は変わらず笑みをたたえている。
「いえ……、その……、……はい」
「いいわよ、何でも聞いて」
ふふ、と笑う玲子は何やら楽しそうだ。
「浅田さんも玲子さんも、お互いに親友のようなものだって言いますけど……。それでも、……未練、みたいなものはないんですか?」
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