第四章 近づく〈塔〉

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「今まで長いこと私が掻きまわしてきちゃったから。浅田には本当に、悪かったと思ってるし、感謝してる」 「私によろしくって言われても……」  気恥ずかしくてごまかしたくなったが、玲子を見たら、それは失礼な気がして口を閉じた。玲子が、真剣な気持ちで言っている気がしたから。 「あ、そうそう。浅田もね、自分を表すカードがあるんですって。何だか知ってる?」  どうやら話題が変わったようで、夏輝の肩の力が抜ける。 「いえ、知らないです。聞いても教えてくれませんでした」  ビールを一口飲んでる間に、玲子が答えを教えてくれた。 「〈ペンタクルのクイーン〉なんですって。笑っちゃうわよね」 「クイーン? 浅田さんが?」 「そうなの。〈ペンタクルのクイーン〉は、地味だけど人にあたたかく、自然を愛し、慈しみ、誠実。よき妻みたいなイメージなんですって」 「へえ。男性なのにクイーンのカードが出るんですね。……あれ?」 「どうしたの?」 ……それどこかで聞いたぞ。あれ? 何だっけ……。たしか黄色の空だからセレブな男性ですかって話をしたような―― 「あっ、わかった!」 「なになに」 「あいつめ! 私が知らないと思ってごまかしたな!」 「あら、なんかおもしろそう」 「なーにがセレブと付き合えるだ! 〈ペンタクルのクイーン〉ってお前のことじゃないか!」     
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