第四章 近づく〈塔〉

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「しかし……」  パーティー用のワンピースでめかし込んだ夏輝は、大きくため息をついた。 「何これ、何この状況」  隣に並ぶ浅田も同感らしく、普段見ないスーツ姿で息を吐いた。 「新婦の元彼と新郎の浮気相手が結婚式に招待されるってなあ。ま、他意はないだろうけど」 「あったら困りますよ」  そう言いつつも、玲子が心から夏輝と浅田に来てほしかったということはわかっていた。  今日は玲子と東城の結婚式。教会の祭壇前に立つ二人は、ため息が出るほどの美男美女カップルだった。特に大人の女性らしい細身のウエディングドレスをまとった玲子は、スタイルもよく、ベール越しにもその美しさが際立った。  式を終えて、今は他の参列者たちと一緒に教会の外で待機中である。  浅田の姿をのぞき見る。正装の浅田はいつもと雰囲気がまったく違って、すごく新鮮で、……ちょっと、かっこいい。  教会の重厚な扉が開いた。東城と玲子が腕を組んで現れると、わあ、という歓声とライスシャワーが飛んだ。 「東城のやつ、クソきまってるじゃないか」  試すように、浅田が夏輝を見下ろした。 「本当、クソ男前ですよね。さまになりすぎて怖いわ」     
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