第一章 目隠しは誰がした?

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「それに何か、明るいカードもあるけど、全体的に見ると暗いし! 黒いカードばっかりあるし!」 「お前、なかなかスジがいいな。カードを何枚も使う場合は、そうやって全体を眺めることも大事だ」 「一枚一枚の意味を覚えられないから、漠然と見るしかできないんですよ。浅田さんはもちろん覚えたんですよね? よく全部の意味を覚えられますよね」  かつて指南書を読んだ夏輝はそこで挫折した。カード一枚にいくつもの意味がある。それを暗記しなきゃならないことに、まずつまずいた。 「べつに覚えるわけじゃねえよ」  腕組みして配置したカードを眺めたまま、浅田が答える。 「ま、最初は本を参考にしたけどな。でもタロットは絵を読み解けばいい。それを他のカードと繋いで、浮かんでくるストーリーを読む。それだけだ」  浅田にはさほど難しいことではないらしい。 「それで……どうなんですか?」  さっきから浅田は、腕組みしたままカードから目を離さない。 「――好感が持てねえなあ」  え? と夏輝は顔を上げた。浅田はなおもカードに目を向けたままだ。 「どういう意味ですか……?」  問いかけても、しかめっ面をするばかりで答えてくれない。 「あの……」 「相手の男は、男前で、物腰の柔らかい、やさしいやつか」 「え、……はい、そうですね。とても……」     
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