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「それに何か、明るいカードもあるけど、全体的に見ると暗いし! 黒いカードばっかりあるし!」
「お前、なかなかスジがいいな。カードを何枚も使う場合は、そうやって全体を眺めることも大事だ」
「一枚一枚の意味を覚えられないから、漠然と見るしかできないんですよ。浅田さんはもちろん覚えたんですよね? よく全部の意味を覚えられますよね」
かつて指南書を読んだ夏輝はそこで挫折した。カード一枚にいくつもの意味がある。それを暗記しなきゃならないことに、まずつまずいた。
「べつに覚えるわけじゃねえよ」
腕組みして配置したカードを眺めたまま、浅田が答える。
「ま、最初は本を参考にしたけどな。でもタロットは絵を読み解けばいい。それを他のカードと繋いで、浮かんでくるストーリーを読む。それだけだ」
浅田にはさほど難しいことではないらしい。
「それで……どうなんですか?」
さっきから浅田は、腕組みしたままカードから目を離さない。
「――好感が持てねえなあ」
え? と夏輝は顔を上げた。浅田はなおもカードに目を向けたままだ。
「どういう意味ですか……?」
問いかけても、しかめっ面をするばかりで答えてくれない。
「あの……」
「相手の男は、男前で、物腰の柔らかい、やさしいやつか」
「え、……はい、そうですね。とても……」
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