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「あと東城がな、もうお前には手を出さないからって」
「そうですか」
「電話で謝ってきた。――俺に」
「え、何で浅田さんに? それじゃまるで……」
浅田さんが彼氏みたいじゃない、と言いかけ慌てて飲み込む。
「知るか。玲子が焚きつけたんだろ」
と言いながら浅田も耳が少し赤い。ホテルに駆けつけたときのあの状況では、浅田が彼氏だと思われてもしかたないが。
――そういえばあの日以来、浅田は何も言ってこない。ホテル騒動のあとの、「玲子より夏輝の方が○○だから好きだ」と連呼したあの夜から、何も。
時が経つほど、結局あれはどういう意味で受け取ればいいのだろうと判断に悩む。間違いないのは、浅田はよく食べる女が好きだということ。
無意識にじーっと浅田の横顔を見上げる。
「……こっち見んな。玲子たちを見てやれ」
正面を向いたまま、浅田がムッとする。
「そうします」
顔を戻すと、東城と玲子がすぐそばまで来ていた。いつもの髪の分け方と違う東城もかっこいいし、髪をアップにしてうなじを見せている玲子もまぶしいほど美しい。
「夏輝ちゃん、今日はありがとう。浅田も」
「玲子さん、すっごくきれい。本当にきれい……」
言いながら、鼻がツンと痛くなって、涙が込み上げた。
「本当によかった……」
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