14人が本棚に入れています
本棚に追加
感極まって、玲子と抱き合う。
玲子の幸せを、心の底から嬉しく思う。ようやく、この二人はスタート地点に立ったのだ。円満を継続するためには努力が必要だと玲子が言っていた。あとはこれから。――これからなのだ。
隣で見守っている東城は何も言わないが、すっかりすがすがしい顔になって玲子に微笑んでいる。
「東城さん」
話しかけようか迷ったが、今絶対言っておきたいと思い、夏輝は東城を呼んだ。東城はかすかに驚いた顔をしたが、彼なりに覚悟を決めていたのだろう、夏輝にまっすぐ体を向けて、言葉を待った。
「玲子さんのこと、幸せにしてください」
東城は小さくうなずき、
「約束する」
しっかりと答えた。東城も正位置になったのだ。これからは玲子だけを慈しむだろうし、二人で素直に愛情を注ぎ合うのだろう。
「夏輝ちゃん、これ受け取って」
玲子が、持っていたブーケを夏輝に手渡した。
「えっ、これ、後でブーケトスするんじゃ……」
「いいのよ。だってブーケに群がるほど女友達いないし」
参列者はそれなりの数だが、そのほとんどは会社の関係者。もう隠すのはやめる、名字も「東城」を名乗ると玲子は言っていた。今日はその宣言の日なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!