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「これは夏輝ちゃんに受け取ってほしいの。夏輝ちゃんは、――大切な親友だから」
「ありがとう玲子さん……。お幸せに。本当に……っ」
結婚式でこんなに泣けたのは、初めてだった。
玲子も目を潤ませて微笑み、東城と寄り添って、再び歩き出した。
「東城のやつ、俺と目合わせなかったな」
「あははっ、怖いんじゃないですか?」
二人の背中を見送ったあとは、敷地内にある披露宴会場への移動だ。むっつり顔の浅田と並んで、ガーデン内を眺めながらゆっくり歩く。隅々まで手入れが行き届いたガーデン。花やリボンで品よく飾られ、振り返れば白くて美しい教会が建っている。
「いいなあ、結婚式……」
憧れまじりのため息が出る。
「こんなステキな場所で、みんなに祝福されて、ウエディングドレス着て……」
他の参列者は皆移動し、静かになったガーデンには、浅田の革靴と夏輝のハイヒールの音だけが聞こえた。
「あれ?」
「何だ」
浅田も足を止めて振り向く。
「この景色、何かに似てる」
教会、参列者、笑顔、花、リボン、白い柱のアーチ……。
「……遅れるぞ。早くしろ」
浅田はすぐに背を向けて歩き出した。
「ちょっと待ってよー。ほら浅田さん、この感じ、なにかに似てません? ほら、ええと……」
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