第四章 近づく〈塔〉

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「これは夏輝ちゃんに受け取ってほしいの。夏輝ちゃんは、――大切な親友だから」 「ありがとう玲子さん……。お幸せに。本当に……っ」  結婚式でこんなに泣けたのは、初めてだった。  玲子も目を潤ませて微笑み、東城と寄り添って、再び歩き出した。 「東城のやつ、俺と目合わせなかったな」 「あははっ、怖いんじゃないですか?」  二人の背中を見送ったあとは、敷地内にある披露宴会場への移動だ。むっつり顔の浅田と並んで、ガーデン内を眺めながらゆっくり歩く。隅々まで手入れが行き届いたガーデン。花やリボンで品よく飾られ、振り返れば白くて美しい教会が建っている。 「いいなあ、結婚式……」  憧れまじりのため息が出る。 「こんなステキな場所で、みんなに祝福されて、ウエディングドレス着て……」  他の参列者は皆移動し、静かになったガーデンには、浅田の革靴と夏輝のハイヒールの音だけが聞こえた。 「あれ?」 「何だ」  浅田も足を止めて振り向く。 「この景色、何かに似てる」  教会、参列者、笑顔、花、リボン、白い柱のアーチ……。 「……遅れるぞ。早くしろ」  浅田はすぐに背を向けて歩き出した。 「ちょっと待ってよー。ほら浅田さん、この感じ、なにかに似てません? ほら、ええと……」     
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